トップヘアメイクアーティストとして多くの花嫁に寄り添ってきた服部由紀子さん。そんな彼女が、自身の結婚式を名古屋と東京の2会場で開催。そこには、これまで出会ってきた新郎新婦やゲストへの感謝、そして自らの人生を見つめ直す“本質”が詰まっていました。
今回は、その特別な一日について、服部さんにじっくりお話を伺いました。

──本日はインタビューお願いいたします。早速ではありますが、ご結婚おめでとうございます。結婚式を名古屋と東京で2回行ったとのことですが、どのようにして開催を決められたのですか?
服部さん:ありがとうございます。入籍は11月11日。SNSで投稿したところ、「見たい!」という声が殺到し、1万以上のいいねがつきました。その反響を受けて、「やろう!」と夫と一緒に決断しました。
──花嫁さんを結婚式に招待したのは、その「見たい!」の声がきっかけだったのですか?
服部さん:はい、たくさんの花嫁さんが楽しみにしてくださっていました。これまで担当させていただいた花嫁さんたちから、担当した最後の別れ際に、花嫁からの寂しいという気持ちと同時に、絶対に幸せになってね、花嫁姿見せてください!と熱く握手で送り出された事が心に残ってて「ドレスを着ないのはよくない、やるべきだ!」と感じたんです。最初は小規模で考えていたのですが、周りから「どうせなら”服部由紀子”として堂々とやったら?」と背中を押され、盛大に行うことにしました。
──結婚式を名古屋と東京、2箇所で開催されたとのことですが、それぞれどんな思いがありましたか?
服部さん:名古屋は「マリオットアソシアホテル」にて。お世話になった方々への感謝を伝えたいという思いがあり、関わってきた場所で行いました。東京は「IWAI OMOTESANDO」。本質を見つめ直す時間になり、とても意義深い式となりました。名古屋の挙式では、卒花さんも招待して特別な時間になりましたね。


──名古屋挙式の準備で印象に残ったことはありますか?
服部さん:ドレスやタイムライン、音楽や装飾など、本当にすべてに向き合って作り上げました。チャペル前のタペストリーには、友人のフォトグラファーが撮った自然の川の写真をプリント。和紙で作った花なども用いて、細部まで「自分たちらしさ」にこだわりました。
──名古屋挙式のゲストでの前のファーストミートや、再入場と中座中の演出などさまざまなサプライズに驚いた方も多かったかと思います。実際にやってみてご感想は?
服部さん:まず彼とのファーストミートでは、私のいつもの現場の黒服のイメージはついていたけど、ウェディングドレスは予想できなかったみたいで、彼のリアクションが新鮮でした。「わ〜〜〜〜〜」と感動してくれて、ぐるぐる回る姿が彼らしくてとても嬉しかったです。
中座中には感謝を伝える演出を盛り込みました。音楽のプレゼントとして、ファイナルファンタジーや「新しい学校のリーダーズ」の演奏を担当している友人のサプライズミュージックを。情熱大陸のサウンドで私が再登場。ゲストと一緒に創り上げた式となりました。




──名古屋挙式の後に、卒花さんたちとの時間を設けていたことも印象的でした。どんな思いで?
これまで私が担当させていただいた新郎新婦様だけをご招待して、特別な時間を設けました。私が「結婚式をしよう」と思えたのは、紛れもなく皆さんのおかげなんです。花嫁勉強会を通じて『結婚式は素晴らしい』と伝えてきた私が、やらないわけにはいかないと思ったんです。だからこそ、その想いへの恩返しとして、そして“未来の花嫁”へメッセージを込める場として、感謝を込めてご招待しました。会場の都合上、人数は限らせていただきましたが、私にとってかけがえのない時間になりました。



──東京での結婚式は「本質を見つめ直す場」として特別な意味があったそうですね。
服部さん:はい。名古屋でのお披露目を経て、東京では“本質”に立ち返ることがテーマでした。映像から始まる挙式では、「この人はどんな人生を歩んできたのか」を赤裸々に伝える内容を流しました。恥ずかしいと思えるようなことも隠さず、自分たちをさらけ出したんです。普段から私は隠すことのないタイプなので、「どう見られるか」ではなく、「私たちはこういう人間です」という姿勢でいました。かっこつけない、取り繕わない、でも芯はしっかり。そんな自分らしさを大事にしました。

──ゲストとの関係性も大切にされたとか。
服部さん:そうですね。挙式では向かい合うように座り、親しい友人に手紙を読んでもらう時間を設けました。感謝や応援の気持ちを直接伝えてもらうことで、心が一つになる瞬間を感じました。おもてなしというより、“一緒に時間を作る”という感覚に近かったです。




──東京の結婚式のパーティへのこだわりはありますか?
服部さん:はい。東京ではイベント的な演出(ケーキ入刀など)は行わず、私たちは流しテーブルの中央に着席しました。そしてゲスト全員を一人ずつ紹介しながら、その人のことを知ってもらうようにし、一緒に時間を作る仲間という意識を込めました。ペーパーアイテムも極力削ぎ落とし、情報ではなく“関係性”が伝わる場を意識しました。


──衣装は白6着ということでとても驚いたのですが、どんな思いを込めて?
服部さん:カラードレスは他の機会でも着られますが、白は花嫁の特権。だからこそ、白一色でどこまで自分を表現できるかに挑戦しました。名古屋の1着目は「MAGNOLIA WHITE」。いい意味でみんなの期待を裏切るような装飾もとてもキラキラした王道の花嫁スタイル。2・3着目には「FOURSIS & Co.」。1着目と一変したスタイルで。



東京の1着目は「FOURSIS & Co.」のシンプルでマットな素材、2着目は「MAGNOLIA WHITE」の動きやすいパールが全身にあしらわれた半袖ドレス。そして3着目は、衣装屋さんと一緒に作り上げたオーダーメイド。好きなテイストや雰囲気を伝えて形にしてもらいました。それぞれのドレスには思いや自分自身のスタイリストとしての視点が詰まっています。
ヘアメイクは衣装や場面に合わせて選びました。私自身、コーディネートで魅せるのが得意なので、全体のバランスや組み合わせには特に気を配りました。ヘアメイクよりもトータルのスタイリングにこだわったと言えるかもしれません。



──結婚式を通して伝えたかったメッセージはありますか?
服部さん:まず、自分たちの人生に丁寧に向き合ってほしい。どう生きてきたのか、どんな悲しみがあったのか――それを2人で語り合い、その上で関わる人たちに楽しんでもらえる時間を作っていくこと。そのプロセスこそが、結婚式の本質だと私は思っています。そして、準備において何より大切なのは“優しい気持ち”で向き合うこと。その先に、ドレスやヘアメイクの話がある。そんな順番で式を組み立てていってほしいなと思います。。ドレスを選ぶ時は、トレンドや価格だけじゃなく、そんな自分の軸と向き合って「本当にこれが好き?」と一度考えてみてください。
──旦那様からも一言お願いします。
旦那様:結婚式って、花嫁が主役になる。でも、僕は“妻ファースト”が大事だと思ってました。喧嘩することもあったけど、それも含めて一緒に作り上げていくもの。準備は大変だけど、楽しむためにやっているって気持ちを忘れずに、ふたりで支え合いながら乗り越えてほしいです。
服部さん:その言葉が、準備中どれだけ救いになったか。自分が自分でいられること、それを肯定してくれる存在が隣にいてくれたから、私は心から楽しめました。
