新たな恋愛小説の旗手が紡ぐ、はかなくも美しいラブストーリー。
やりたいことが何もない自称「空っぽ人間」の葵井日向(あおいひなた)は大学四年生の春、就職試験に全滅した。ある日、日向は友人から不思議なアルバイトを紹介される。
〈桜の花びら集めてみませんか? 一枚一円で買い取ります〉
怪しいと思いつつも、花びらを準備した日向。待ち合わせ場所に現れた依頼主は、花のように美しい女の子だった。彼女がくれた「ありがとう」という言葉は、人生に希望をなくしていた日向の心を鮮やかな色に染めた。去り際に手渡された名刺には「フラワーショップ コノハナ 雪野雫(ゆきのしずく)」とあった。
もう一度、彼女に逢いたい。誰かに「ありがとう」と言われる仕事がしたい。その思いを胸に、日向は空っぽな人生から新たな一歩を踏み出した。
しかし雫には、大きな秘密があった……。
«「勘違いだったらごめんね」
「なんですか?」
「もしかしてあなたは……ひまわり君は……わたしに恋を、していますか?」
頷けなかった。勇気がなかった。
「もしそうなら――」
彼女は首に回した腕にぎゅっと力を込めた。
「待ってないでほしいの」
「……え?」
「わたしはあなたのことを好きにはならない。ひまわり君もそう。本当のわたしを知ったら、きっと好きじゃいられないから」
信号が変わったが動けずにいると、斜向(はすむ)かいの反対車線に国産車が停車した。
「わたしね――」
そのヘッドライトが眩しくて目を閉じかけた。
「一年でたった七日間しか起きていられないの」
雫の言葉に、日向はまばたきを忘れた。»
雫は一年のほとんどを眠り続けるという不思議な体質の持ち主だったのだ。彼女に逢えるのは夏の夜、ほんの一週間だけ。その事実に動揺を隠せない日向。
どれだけ逢いたくても、夢の中には逢いにゆけない。夢の中じゃメールも電話もできない。声だって聞くこともできないんだ。そんな女の子と恋なんて絶対にできっこない。
どんな国よりずっと遠くて、どんな時差よりずっと永い、夢と現実に引き離された恋の行方は……。
明日、君に見せたい景色と出逢うかもしれない。
明日、君に伝えたい言葉が分かるかもしれない。
明日、君としたい夢が見つかるかもしれない。
明日さえあれば、幸せになる可能性は消えないんだ。
誰かを想う気持ちが、生きる糧となる。
映画化(Netflixで3月24日配信開始)されたヒット作『桜のような僕の恋人』の著者が贈る美涙必至の恋愛小説。いきいきとした花の描写が目に浮かび、物語に色を添える。ひだまりに包まれるような優しい読後感が心地いい。
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『ひまわりは恋の形』
著/宇山佳佑
定価:1650円(税込)
判型/頁:4-6/336頁
ISBN978-4-09-386639-2
小学館より発売中(3/14発売)
本書の紹介ページはこちらです↓↓↓
https://www.shogakukan.co.jp/books/09386639
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【著者プロフィール】
宇山佳佑(うやま・けいすけ)
1983年生まれ。神奈川県出身。脚本家として、ドラマ『スイッチガール!!』『主に泣いてます』『信長協奏曲』などの脚本を執筆。著書に『ガールズ・ステップ』『桜のような僕の恋人』『今夜、ロマンス劇場で』『君にささやかな奇蹟を』『この恋は世界でいちばん美しい雨』『恋に焦がれたブルー』がある。