<研究背景>
「いつ」「誰に」「どのような」タイミングでクーポンやセールの案内などのコミュニケーションを行なうことが最適で、かつ2回目の購入につなげられるのか、という初回購入者のリテンションを改善していくことが、当社において重要な課題の一つでした。しかしながら、CRM(※4)の観点で、そうしたコミュニケーションが行われるタイミングとして「いつ」が最適かについては、学術的にも明確な解が得られていませんでした。そこで、経済学やマーケティングサイエンスの分野で、学術的にも新規性があるこの課題に対して、計量マーケティングや機会学習を専門とする上武氏の知見と、当社の保有する大規模かつ多様なデータやファッションECにおける知見を掛け合わせることにより、この重要な課題を解決し、ユーザーごとに最適なコミュニケーションの実現を目指すべく、本共同研究を行うに至りました。
<研究概要と結果>
今回、ポスター発表に採択されたリテンションに関する共同研究では、ZOZOTOWNに蓄積された過去の膨大な購買データなどをもとにアルゴリズムを開発し、そのパフォーマンスをZOZOTOWN上で検証しました。具体的には、開発したアルゴリズムにより、ZOZOTOWNの初回購入者に対して、最適なタイミング、最適な内容でメール送信などの施策を実行しました。その結果、初回購入者の二回目購入確率が約6%上昇し、年間数十億円の純増GMV(※5)を生むことができました。さらに、それ以降の将来の購入確率についても同様に上昇することが分かりました。
<今後の展望>
今後は、初回購入者だけでなくZOZOTOWNを利用していただいている全てのユーザーに対して、最適なコミュニケーションを行い、長期的な顧客価値の最大化を目指すべく、引き続きアルゴリズムの改善を推進してまいります。
(※1)2020年2月18日付け当社のプレスリリース「株式会社ZOZO、米イェール大学との共同研究を開始 経済学の応用によって、ZOZOTOWNの顧客価値最大化を狙う」 https://corp.zozo.com/news/20200218-9731/
(※2)既存顧客との関係を維持していくための活動のこと
(※3)「RecSys」は推薦システムに関わる世界中の研究者やデータサイエンティストらが集う権威ある国際会議
(※4)Customer Relationship Management(カスタマー リレーションシップ マネジメント)の略で、日本語では「顧客関係管理」または「顧客関係性マネジメント」など
(※5)流通取引総額
■イェール大学 准教授 上武康亮(ウエタケ コウスケ)氏
米国ノースウェスタン大学経済学博士号(Ph.D)を取得。現在は、米国イェール大学経営大学院マーケティング学科准教授として研究に従事し、現在マーケティングのトップジャーナルであるMarketing Science誌の編集審査委員を務める。また、同大学のMBAプログラムでは、データドリブンマーケティング(ビッグデータを用いた消費者行動分析)などの講義を担当する。計量マーケティング、実証産業組織論、マーケットデザイン、CRMを専門分野とし、日米のテック企業とも多くの共同研究を行うなど幅広く活躍する。
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