全体的な傾向と過去3年間の比較をお伝えした速報、各ストレス尺度の傾向をまとめた続報に続き、今回は、全業界の中で最もリスクが高い結果となった「製造業」について解説いたします。
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- 製造業の業界平均値、「働きがい」「同僚からの支援」「家族・友人からの支援」「職場環境によるストレス」がワースト1!?
「製造業」はかなり幅広い職種が対象となり、2021年平均で約1,037万人、全就業者(男女計6,667万人)の約16%を占める大きな業界です。当社のストレスチェックでも最多の366企業88,674名の方にご協力いただいております。
「製造業」の2021年度業界平均値は、総合健康リスク112・高ストレス者割合17.8%となりました。
昨年度以前から引き続き、総合健康リスク・高ストレス者割合ともに全国平均(総合健康リスク:100、高ストレス者割合:10%)や他業界と比較しかなり高い(不良な)傾向にあります。特に高ストレス者割合は15%を超え、全業界中最も高く、注意が必要な事業場が多くあったとみられます。
上のグラフは、全体(男女総合)の結果を数値化したものですが、男性の高ストレス者割合は20%に迫るほど(男性:19.2%、女性:14.5%)高い数値でした。
各尺度ごとに比較すると、「自覚的な身体的負担」「同僚からの支援」「家族・友人からの支援」に、男女ともに注意が必要な値がでていることが特徴です。 心身のストレス反応の項目では「身体愁訴」が、男性に限っていえば「抑うつ感」「不安感」「疲労感」なども総じて平均を下回っています。この数値は、「なんとなく体調がすぐれない」「病院に行くまでではないが、元気はつらつな状態ではない」など、すでに心身の不調を抱えながら働いている方が多くいらっしゃることを示しています。
その他、業界の特徴的な面が多く出ている部分としては、「技能の活用度」が男女ともに不良である点が挙げられます。同一の現場であっても事務・製造ライン・品質管理・技術研究などさまざまな職種が含まれるため一括りにすることはできませんが、「自分の貢献度がわかりにくい」「働きがいを見出しづらい」と感じている方がいらっしゃることが結果から読み取れます。
生産工程従事者や、単純作業・決まった作業の繰り返しが業務の大部分を占める方は、業務の特質上「スキルを身につけられている実感が得にくい」「実績や貢献度がわかりにくい」部分があるため、ある程度「技能の活用度」 が低く出てしまうのは想定できます。その場合、「働きがい」の数値には、その仕事や普段の生活に満足しているかどうかも関係してくると考えられます。身の回りに起こる「ストレスとなる出来事」をストレスと感じるか否か(ストレスの感受性)や、ストレスを上手く処理できる力(ストレス耐性)には個人差がありますが、一般的に、「働きがい」 を見出すことが難しい場合、ストレスを感じやすくなる傾向にありますので注意が必要です。
上記のグラフでは、男性に比べ、女性の方が「働きがい」の値はよい結果となっていますが、実は男女合わせた全体の数値を他の業界と比べてみると、製造業界の「働きがい」の数値(48.7)はワースト1です。すでに特徴として挙げた「同僚からの支援(47.3)」「家族・友人からの支援(47.5)」 に加え、「職場環境によるストレス(48.7)」も同じく、全業界中最も不良な数値が出ている点は、管理監督者の方々には特にお伝えしておきたいポイントです。
なお、全業界通して最も多くの企業様にご協力いただいている「製造業」界の2021年ストレスチェック受検率は、90.08%でした。もちろん各企業様ごとに異なりますが、全体として9割以上の方々にご回答いただけたということになります。この結果からは、従業員の方々がストレスチェックに協力的で、信ぴょう性のあるデータとなっている可能性が高いことがいえます。
ストレスチェックの集団分析は、回答者数が多ければ多いほど、各事業場の傾向を正確に把握することができます。せっかくのストレスチェックをやりっぱなしで終えることなく、職場環境改善等に効果的に活用しましょう。
- 職場環境改善のポイントは?-「高ストレス者予備軍」と 「組織の疲労体質改善」対策
高ストレス者割合の高さと、他の業界と比べて不良な値となっている項目を総合して考えると、 次の5項目を優先して職場環境改善に取り組むとよいでしょう。
「身体愁訴」
「働きがい」
「同僚からの支援」
「家族・友人からの支援」
「職場環境によるストレス」
それぞれの職場の環境や業務内容、人間関係、仕事だけでなく私生活も含めた個々のストレス状況により必要な対策は異なりますので一概にはいえませんが、
・心身の負担をきちんと回復する時間の確保と、それができる環境
・ストレスをため込まず、周囲に打ち明けることのできる関係性
これらを職場内に浸透させる「組織の疲労体質改善対策」が必要です。
例えば、定期的な休暇取得の推奨、各人の残業やノルマ・労働時間を見直すなどの対策は、従業員それぞれが心身の負担を回復する時間を確保できるだけでなく、仕事以外に目を向け交流をする機会を増やすことにもつながり、「家族・友人からの支援」も得やすくなります。
職場内のコミュニケーションや、従業員同士の関係を円滑にすることに意識を向けるのも効果的です。安全・衛生管理上、勤務中は雑談やコミュニケーションが制限されている現場もあるでしょう。かといって、人間関係が円滑でないと同僚や周りからの支援が十分に得られず、結果的に業務に支障をきたし、ミスが発生してしまうリスクも高くなります。そのような状況では、心身の不調を感じていたとしても周囲に打ち明けづらくなるだけでなく、チームの一員として組織に所属している・貢献しているという実感すら持てず、「働きがい」を見出しにくい環境になってしまうでしょう。
自分の担当する仕事や業務外の悩み・不安も含めて、気軽に相談できる場や機会を定期的に設けることや、一緒に働く同僚同士お互いに気を配り、意識的に声かけをするなど、協力して仕事を進めるために必要な職場環境づくりに積極的に取り組むことで、改善が期待できます。
また、すでに身体愁訴(なんらかの身体の不調)が表れている方は、「高ストレス者予備軍」である可能性もありますので、日ごろから従業員のケアも大切なポイントと思われます。不調を抱えたまま就業することは、働くことへの不安やイライラ感、疲労感にもつながり、ケアレスミスの増加や作業効率・集中力の低下が危ぶまれる状態、つまり【プレゼンティーズム(presenteeism)による生産性の低下】などを引き起こします。不調が本格化する前に未然に防げるよう、産業医やメンタルヘルスの専門家に相談できる体制を整えることも検討してみてはいかがでしょうか。
- 製造業の業界平均値、コロナ前後で大きな変化なし?
2020年後半から2021年にかけてを振り返ると、新型コロナ感染症流行の影響により、生産規模の縮小や業務の遂行方法の検討を迫られるなど、合理化やコスト削減を行わなければならない苦しい状況にあったことは記憶に新しいかと思います。厚生労働省の公表している「労働経済動向調査」でも、令和2・3・4年度は「正社員・パートタイムの雇用が減少した」と回答する企業が多くあったとの報告があります。コロナ禍でメンタル不調者の増加がみられていることも、経済的な不況や雇用契約の不安定さなどからくる不安感や、人員削減による負担の増加とも無関係ではないでしょう。当社のお客様からも、現場の実状をうかがう機会があり、コロナ禍で製造業界が直面した課題やストレス状況がとてもよく伝わってきました。
こうした現場の実感が聞こえてくる一方で、当社発表の「ストレスチェック業界平均値」の推移を見てみると、新型コロナウイルス感染症の流行以前から、総合健康リスク・高ストレス者割合ともに不良な数値が目立っていた製造業界は、数値上、大きな悪化はみられませんでした。2020年に関しては、「仕事の質的・量的負担」が一時的に若干改善し、平均を上回る数値(もしくは、同程度)となったものの、2021年はコロナ流行以前とほぼ同じ値に戻り、依然としてストレスが高い状態が続いているようです。
いずれにしても、さまざまな社会情勢・職場環境の変化に関わらず、普段の業務内容や職場の環境からくるストレスの負担感を少しでも軽減し、その負担感が実際の体調不良や心身の健康を阻害してしまう前に、できる対策から始めることが各企業に求められているのではないでしょうか。
なお、この数値にはコロナ禍で職を離れざるを得なくなったり、勤務時間・雇用形態が変わりストレスチェックの受検対象でなくなってしまった方(休職中の従業員も含む)は含まれていない可能性があるため、ストレス状況の変化を正確に比較することは難しく、あくまでも数値上の分析として考えていただければと思います。
そして、今回の「製造業」の業界平均値の分析と併せて、それぞれの現場の状況やストレス状況の変化を、日ごろのコミュニケーションやストレスチェックの集団分析等でご確認いただくことをおすすめいたします。
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詳細な分析結果につきましては、当社の公式ブログ「AltPaperストレスチェックマガジン」(https://www.altpaper.net/b/)にて公開しております。
また、「運輸業」「宿泊業・飲食サービス業」について詳しく解説した記事も公開していますので、ぜひ併せてご参照ください。
- 調査方法
この度算出いたしました2021年「業界平均値」データは、当社サービス「AltPaperストレスチェックキット」を2021年中にご実施いただいた事業者を対象に、集団分析結果のご提供の承諾を個別に伺い、同意いただいた事業者のデータのみを用いて分析を行ないました。2021年12月末日までに当社で集計を完了した1525事業者の男性207,679名、女性162,568名を含む約37万名のデータが含まれます。
※2021年単年の「AltPaperストレスチェックキット」導入事業者数は約33,00法人、受検者数は約90万人。
比較の基準としている「全国(厚労省データ)」は、“厚生労働省科学研究費補助金労働安全衛生総合研究事業「職業性ストレス簡易調査票及び労働者の疲労蓄積度自己診断チェックリストの職種に応じた活用法に関する研究」平成19年度総括・分担報告書 表4 職業性ストレス簡易調査票下位尺度の職種別平均値及び標準集団との比較”が出典です。集計につきましては、事業者様のデータについて全参加者データ・男性参加者データ・女性参加者データの3軸に分け、高ストレス者の出現割合、健康リスク、各尺度の平均値を業種ごとに算出しました。なお全参加者データにつきましては、「男性」の基準値を用いて総合的な数値の算出、比較・分析を行っております。
※1 データの取り扱いについて:
・各事業者様にご提供いただいたデータにつきましては、業種・規模・地域をお伺いして分類することとし、個々の事業者様・受検者様を識別できないようにして取り扱っております。
・各受検者様の回答につきましては、性別・職種と57項目・80項目の回答データのみ使用することとし、個人を識別できないようにして取り扱っております。
※2 「高ストレス者」とは:
厚生労働省(令和元年7月)が公表したマニュアルに基づいており、以下(1)及び(2)に該当する者を指します。(1)及び(2)に該当する者の割合については、概ね全体の10%程度を基準とします。
(1)「心身のストレス反応(29項目6尺度)」の合計が12点以下
(2)「心身のストレス反応(29項目6尺度)」の合計が17点以下で「仕事のストレス要因(17項目9尺度)」
及び「周囲のサポート(9項目3尺度)」の合計が26点以下
※3「健康リスク」とは:
基準値として設定された全国平均値100からどの程度乖離しているかで算出されます。また、健康リスクの数値を表す「仕事のストレス判定図」とは、 男女別に求められた量-コントロール判定図と職場の支援判定図から構成されます。この二つの調和平均が「総合健康リスク」となります。
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株式会社情報基盤開発について
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2004年に東京大学内ベンチャーとして創業。
独自研究・開発した帳票自動読み取り技術とデータベース技術をもとに、2006年12月からアンケート自動入力・集計ソリューション「AltPaper」のサービス提供を開始し2015年4月から「AltPaperストレスチェックキット」の提供を開始してストレスチェック事業に参入。
仕事上のストレスが生産性やワークライフバランスに影響を与えない職場づくりを重点的にサポートするべく、2021年より「ストレスに悩まない職場をつくる」を企業スローガンに、ストレスチェック実施サポートをはじめとする職場のメンタルヘルスケア・健康経営領域に向けたサービスを手掛けています。
・代表取締役:鎌田 長明
・事業内容:「AltPaperストレスチェックキット」の販売・OEM提供、パワハラ防止法対策に伴う外部相談窓口・メンタルヘルス相談窓口代行サービスなど
・設立:2004年8月
・本社:東京都文京区湯島4丁目1-11 南山堂ビル3階
・コーポレートサイトURL:https://www.altpaper.net/
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AltPaperストレスチェックとは
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「AltPaperストレスチェック」サービスサイト https://www.altpaper.net/sc/
– 業界最大級、2021年度単年で導入事業者数3,300社・受験者数90万人!
2015年12月の改正労働安全衛生管理法施行以来、従業員50名以上の法人事業主を対象に義務化された「ストレスチェック」実施を行うためのサービスパッケージです。厚生労働省マニュアル完全準拠で、2015年12月のサービス提供から多くの企業・法人団体ご担当者にご愛顧いただき、間もなくサービスリリースから6年目を迎えます。
紙版・Web版どちらでも、組み合わせてのご利用も可能で、紙版ストレスチェックについては「業界最安値保証」サービスを実施。
そのほか、
・集団分析は10集団まで無料
・過去5年分のストレスチェック実施データ無料保管
・ストレスチェック実施規程や高ストレス者への面接指導勧奨文書などの社内従業員向け、労働基準監督署への提出文書などのひな型文書ダウンロード提供
・精神保健福祉士など国家資格有資格者による対応サポート
……など、ストレスチェック実施から運用までを手厚くフォローアップいたします。
– 豊富なオプションサービスで、ご予算・ご懸案事項に応じたカスタマイズに対応
「実施者代行」「医師面接代行」「産業医紹介」はもちろん、日本語・英語・中国語(簡体字)・中国語(繁体字)・韓国語・タガログ語・ベトナム語・タイ語・インドネシア語・クメール語・ネパール語・ポルトガル語・スペイン語・マレー語・ミャンマー語の全15言語の「多言語版ストレスチェック」を用意(言語によってカスタマイズできる内容が異なります)。「従業員満足度調査」や、パワハラ防止法で義務付けとなった「ハラスメント相談窓口」の代行や、従業員のメンタル相談窓口サービスなども専門スタッフが対応いたします。
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