■ 研究の背景
日本人の死因第5位は「肺炎」で、70歳以上の肺炎患者の7割以上は誤嚥性肺炎となっています。誤嚥性肺炎の原因の多くは、口腔嚥下機能の低下であると言われています。誤嚥性肺炎の予防においては、嚥下機能の予防が必要だと考え、嚥下機能低下を可視化し嚥下機能低下予備軍への対応策を創出することを目標に研究を進めてまいりました。
■ 嚥下機能低下予備軍を対象としたEMSによる舌骨上筋群の筋収縮運動の効果検証
1.研究目的
先行研究として、嚥下機能が低下すると嚥下時の舌骨上筋の筋活動時間(Swallowing Muscle contraction Time:以下SMT)は延長することを実証し、第41回関東甲信越ブロック理学療法士学会にて発表いたしました。本研究によって、健康寿命の延伸には嚥下機能障害を呈する前にSMTを短縮させ、嚥下機能の維持・向上を図ることが可能なリハビリテーションプログラムが必要であることが示唆されました。
これまで嚥下機能の改善においては、言語聴覚士による口腔内への直接的なリハビリテーションが主流でしたが、近年はEMS(Electric Muscle Stimulation:電気刺激療法)を用いたアプローチが国内外で散見されています。特にアメリカ・イギリスでは、舌骨上筋へのEMSは嚥下機能改善のエビデンスが実証されており、積極的にプログラムが提供されています。
日本においては、EMSが医療領域での嚥下機能障害群へのサービス提供に限定されているため、在宅領域での嚥下機能低下予備軍への提供は進んでいない状況です。
このような現状を踏まえて、機能低下予備軍に対する舌骨上筋へのEMSの効果検証を実施し、EMSが嚥下機能向上のプログラムとして高齢者に有用であるかを明らかにし、機能低下予備軍へのプログラム提供を推進することを目的として検証を実施しました。
2.効果検証方法
①介入方法
・週1回、1回10分間通電(元氣ジム通所時)
・4週間継続して実施・電気刺激部位は「舌骨上筋」(右図参照)
②対象者
通所介護施設 元氣ジム利用者(綾瀬・亀戸・高島平)
嚥下機能低下予備軍16名(男性10名,女性6名 74歳±13)
③評価方法
・反復唾液嚥下テスト(Repetitive Saliva Swallowing Test:以下RSST)
・嚥下機能を評価する一般的な評価
・30秒間に唾液を飲み込んだ回数を測定する評価方法
・初回と4週間後で1回ずつ計測
3.結論
「舌骨上筋への10分間電気刺激」の実践にて、介入を 実施した全ての方で初回と4週間目のRSSTの回数の差は有意に向上し嚥下機能の向上が認められ、短時間の 電気刺激により嚥下機能の改善が図れることが実証されました。
なお、この研究結果は、第28回日本摂食嚥下リハビリテーション学会学術大会(千葉)で発表いたしました。
URL:https://site2.convention.co.jp/jsdr28/
■ 今後の展望
当社は嚥下機能に関する検証および研究報告を通じて、リハビリ特化型デイサービス「元氣ジム」のご利用者へ効果的な口腔嚥下機能向上プログラムの提供を開始することができるようになり、口腔機能向上加算の取得も可能となりました。
今後は、本検証を通じての成功体験やノウハウを開発に活かした加算取得支援サポート「R-Smart」※を通じて、高齢者への嚥下口腔機能向上プログラムの提供を推進し、健康寿命の延伸に貢献してまいります。
※「R-Smart」について
「R-Smart」は口腔機能向上加算を効率的に算定するために必要な帳票を効率的に作成する「システム」と、楽しく効果的な「プログラム」、運用ノウハウを活用した「サポート」がパッケージ化された加算取得支援サポートサービスです。2022年10月1日より通所介護事業者様に向けてサービス提供を開始いたしました。