EPARK順番待ちシステムを導入する繁盛店の取材を通し、経営や成功のヒントを発信することで飲食業界全体の発展にも寄与できるとして、2022年10月17日、阪神梅田本店における導入事例を公開致しました。
- 全社横断の組織再編によりOMOを推進
- “食の阪神”のプライドをかけた “目的来店”への転換
- 国内初の「プレミアムルーム」実現に至る背景
- OMO戦略を支えるEPARKシステムソリューション
- 混雑回避と席回転率を同時解決する日時指定順番待ち機能
- 今後の課題と将来展望
「食の阪神」として親しまれてきた阪神梅田本店。約7年間、営業をしながら建て替え工事を行い2021年10月に新しい飲食フロア「阪神大食堂」をオープンした。1年を経た現在も連日大勢の人で賑わう繁盛ぶりである。
「新・阪神梅田本店」プロジェクトのキーマンであるOMO(※)販売推進部ゼネラルマネージャー鈴木健三氏とフード販売統括部レストラン・カフェ営業部マネージャー小黒一茂氏のお二人に、「阪神大食堂」の中でも、その独自性から人気を集めている「フードホール」立ち上げの経緯と成功要因の1つとなっている、「フードホール」という形態にはめずらしい個室空間「プレミアムルーム」についてお話を伺った。この「プレミアムルーム」の予約モデルは「EPARKシステムソリューション」の活用により実現したもので、国内初の取り組みとなっている。
全社横断の組織再編によりOMOを推進
阪急阪神百貨店は2022年春より、店頭とオンラインを融合させ、お客様により快適なお買い物を楽しんでいただける環境をめざして、OMOビジネス関連部署、業務を再編する組織体制となった。具体的には、OMO販売推進部が核となり、営業活動の現場や現場を支えるスタッフ部門まで部署を横断し、個々が必要としている「OMO」(オフラインを融合したオンライン)モデルを構築することを目的とした組織再編である。
その動き自体は組織改革の発表以前からここ数年、社運をかけ進めてきたリニューアルプロジェクトの随時に見られる。建て替え工事に入って7年の間に、デジタル化が幅広い世代に広がっていったこともあり、新たにオープンする「新・阪神梅田本店」には、「旧・阪神梅田本店」にはなかった「OMO」モデルの導入は必須課題となっていた。中でも“阪神大食堂プロジェクト”はそのOMOモデル構築の効果が顕著に現れた成功事例の1つといえよう。
“食の阪神”のプライドをかけた “目的来店”への転換
フードホールの立ち上げにあたり、鈴木氏と小黒氏は従来の百貨店の飲食フロアにあったイメージからの脱却と転換を目指していた。それは“買い物のついでに立ち寄る”「衝動来店」ではなく、“それがあるから阪神百貨店に来店する”という「目的来店」のターゲットとなる飲食フロアの構築である。
全国のどの百貨店の飲食フロアにもない斬新なアイデアや独自性、ソリューションが求められていた。
国内初の「プレミアムルーム」実現に至る背景
鈴木氏はプランニングの立ち上げに携わる過程で、アメリカ視察時に目にした、気の合う仲間と少人数でカジュアルに、好みに応じた料理を別々の店に注文して食べられるというフードホール業態に着目し、日本でも時代の流れに即して受け入れられていくのではないかと直感した。
更に、従来の大衆的な定番人気メニューが連なるフードコートとは一線を画し、”予約困難な名店の味をカジュアルに気取らずリーズナブルに楽しめる”ことを柱とすることで、「食の阪神」らしさを発揮したいと考えた。
しかし一歩先にいくためには、もう1つ、何かが欠けていると感じていたという。
それは百貨店が本来強みとする顧客に寄り添う、顧客視点に立ち返った課題解決思考に基づくものであった。
当時国内にも出来始めていたフードホールを見て回ると、賑わいを見せる一方で「待ち時間」「席の確保」が顧客目線で大きな課題であると感じた鈴木氏。
その原点回帰による課題解決思考が国内初となり差別化の鍵となる“プレミアムルーム”の実現に繋がったことは言うまでもない。
顧客はプレミアムルームの席をEPARKから事前予約することで、並ぶことなく席に座ったままでフードホール内のメニューを気軽に注文でき、スタッフが席まで料理を運んでくれる(※)。まさに顧客視点で開発された画期的な仕組みである。
更に事前予約不要な共用席をプレミアムルームと同時運用することで、百貨店を訪れる幅広い客層やニーズに対応できた点も成功した理由の1つであろう。
予測困難な“VUCA”(※)時代に適応したフードホールの新しいビジネスモデルがここに確立されたと言っても過言ではない。
OMO戦略を支えるEPARKシステムソリューション
フードホールリニューアルプロジェクトの目的の1つとして、若年層の集客強化があったが、EPARKシステムを活用したプレミアムルームの予約モデル構築は回転寿司チェーンや焼肉チェーンでEPARKを使い慣れた若年層の取り込みとストレスフリーな運用に大いに貢献しているという。
プロジェクト開発過程において、OMO戦略の肝とも言える予約システムの構築は大きな課題の1つであった。
自社開発の他、国内外の予約システムをフラットに比較検討したが、複数の課題を同時に解決できるシステムがなかなか見つからず選定は難航した。
決まりかけたコスト優位性のあったシステムも、阪急阪神百貨店が属する「エイチ・ツー・オー リテイリング株式会社」本社の厳しいセキュリティ基準をクリアすることはできなかったという。
選定においては、大切なお客様の情報を取り扱うシステムに見合ったセキュリティレベルを担保しつつ、大量なトラフィックにも耐えうるインフラ基盤、幅広い層の利用を想定した使い勝手や操作性、UIUXなど多岐にわたる基準が設けられていたが、最終的にEPARKがそれらの基準を全てクリアし採用されることとなった。
プレミアムルームの予約者属性データでは45歳以上で全体の約7割を占めており、EPARKシステムがいかに年齢を問わず幅広い客層に受け入れられ、使い易いシステムであったかが伺える。
混雑回避と席回転率を同時解決する日時指定順番待ち機能
当初は順番待ち機能には拘っておらず、基準をクリアした予約システムがEPARKであったという鈴木氏。
やりたいことをEPARKグルメの営業担当者に伝えながら試行錯誤を繰り返し、辿り着いた最適解が現在の形であった。
オープン時はコロナ禍ということもあり、三密を回避しながら、より多くのお客様にご利用頂くため回転率は担保しなければならず、相反する課題に向き合う必要があったが、EPARKが特許を保有する独自機能「日時指定順番待ち」はその課題を同時に解決することができた。
プレミアムルームは90分制ではあるが、通常の席予約の場合、無断キャンセルがあれば確保した席は時間分ロスとなってしまう。しかし日時指定順番待ち機能を活用することで空席を有効に使い切ることなども可能となる。
予約と順番待ちの違い等クリアしていく課題はあるものの、予測困難なVUCA時代においては、バッファをもたせた柔軟なシステム運用が、現場の臨機応変なオペレーションを実現する上では欠かせない要素である。
今後の課題と将来展望
初めての仕組みにしては想定以上の結果を残せているものの、1年間運用してきた中で得られた気づきもあったという鈴木氏と小黒氏。
デジタルな時代だからこそ「待つ」という行為に対する顧客のストレスや課題解決に対するニーズは想像以上であり、各部門を横断して解決に向け真摯に向き合っていく必要が極めて高いと改めて感じられたという。
同時にフードホールの利用方法や予約方法、注文の仕方など見落としがちな細部にも配慮し、お客様目線での分かりやすさを更に追求していきたいとした。
また、フードホールの利用シーンとして特別な目的で利用される方が多かったことから、カジュアルに楽しめる良さは維持しながらも、プレミアムルームの利用形態をシーンに合わせバージョンアップを図るなど検討を重ねていきたいという。
インバウンド需要の回復も見込まれる中、日本観光の新しい名所としてポジションを確立すべく阪神大食堂フードホールのさらなる進化に期待したい。
【用語解説】
※スナックパーク
阪神梅田本店地下一階にある、いか焼きをはじめ、カレーやそば、すしなどを「立ち食い」できるフードコート。1957年「おやつセンター」としてスタートして以来、60年以上もの永きに渡り、低価格で気軽に庶民の味が楽しめる「立ち食いの聖地」として親しまれてきた。2015年建て替え工事により一度閉鎖となるも、2018年新ビルにて復活。大阪の名所の1つとして人気を博している。
https://www.hanshin-dept.jp/hshonten/restaurantguide/snackpark/
※OMO
オンラインとオフラインを融合したマーケティング手法の1つ。「Online Merges with Offline(オンライン マージズ ウィズ オフライン)」の略語。国内では「オンラインとオフラインの統合」という意味で用いられることが多い。阪急阪神百貨店のOMO戦略では「店頭商品のデジタル化」「One to Oneコミュニケーション」「デジタル決済」を実現し、店頭とオンラインを融合させる「OMO」の独自モデルを構築していくとしている。
※フードホールプレミアムルーム予約
EPARK専用ページから日付と時間を指定し予約(日時指定順番待ち受付)が可能。
予約には事前にEPARKの会員登録が必要
https://www.hanshin-dept.jp/hshonten/restaurantguide/premiumroom.html
※VUCA
Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字を組み合わせた造語。1990年代後半にアメリカ合衆国で軍事用語として使われ始めた用語であるが、2010年代になり、環境の変化が激しい予測不可能な時代における考え方の1つとしてビジネス用語としても多用されるようになった。
【取材協力】
株式会社阪急阪神百貨店
阪神梅田本店
大阪府大阪市北区梅田1-13-13
https://www.hanshin-dept.jp/hshonten/
【リリース・順番待ちシステムに関するお問い合わせ】
株式会社EPARKグルメ
東京都豊島区池袋2丁目52−8 大河内ビル
ファストパス事業部
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