今回は、オミクロン株(BA.1)ワクチン接種の登場で、抗体保有状況がどように影響していくかを評価するため、接種開始時から約3ヶ月後の2022年11月末時点まで、抗体保有調査を実施しました。
【調査概要】
検査目的:新型コロナウイルスに対する抗体の保有量調査
検査方法:従来株、オミクロン株のスパイクタンパク質断片(受容体結合領域[※1])に対する抗体の抗体保持量(抗体価)を調べられるイージードクⓇ『 変異株抗体検査 』にて調査
検体検査時期: 2022年9月1日~2022年11月30日
対象:イージードクⓇ『変異株抗体検査』を受けた国内在住で調査協力に同意を得られた340名
対象者数(9月):50名(20代以下10%、30代4%、40代16%、50代40%、60代以上30%)
対象者数(10月):216名(20代以下10%、30代8%、40代23%、50代28%、60代以上31%)
対象者数(11月):74名(20代以下9%、30代12%、40代26%、50代36%、60代以上16%)
【調査結果】
オミクロン株(BA.1)対応ワクチンの一般接種を開始した2022年9月末時点では、従来株以外の各オミクロン株に対する抗体量(抗体価)はかなり低かったのですが、10月末の検査結果では、各オミクロン株に対する抗体がそれぞれ増加していました。これは、オミクロン(BA.1)対応ワクチンの接種率が上昇した結果であると考えられています。
なお、オミクロン(BA.1)対応ワクチン接種によってBA.1だけでなく、BA.2、BA.5に対する抗体も体内にできることが、その後の学術研究により明らかにされています。
BA.1に対する抗体量は、2022年9月末の検査対象者の中央値で18(AU/ml)でしたが、2022年10月末には約108(AU/ml)と約5倍に増加していました。これはオミクロン株(BA.1)ワクチンの有効性(抗体の有無)及び効果(抗体価)の現れだと考えられます。
また、2ヶ月後の2022年11月末に実施した調査では、BA.1に対する抗体が2022年9月末の水準と比較して更に高まり、10倍以上の183(AU/ml)に増加していたことが確認されました。この結果から、オミクロン(BA.1)対応ワクチンには、期待された効果が発揮されていると考えてよいと思われます。
ただ、2022年9月末時点と比較すると、2022年10月末以降はBA.5に対する抗体も増加していますが、2022年10月末から2022年11月末にかけては、ワクチン接種の増加指標となり従来株に対する抗体量が増加しているにもかかわらず、BA.5に対する抗体量は、ほとんど変化が見られませんでした。また、2ヶ月以上経過しても、十分な抗体量(参考値[※2])を保有できていないことが分かりました。
上記の結果から、現在、流行しているBA.5変異株に対抗するべく導入されたオミクロン株(BA.5)対応ワクチンの接種により、BA.5に対する抗体がより多く作られることが期待されていますが、2022年11月末時点では、オミクロン株(BA.5)対応ワクチンは、オミクロン(BA.1)対応ワクチンに比べて、接種率が低く、10月後半の接種開始からあまり時間が経過していないこともあり、まだその効果が現れていなかった可能性があると思われます。
そのため、当社では引き続きオミクロン株(BA.5)ワクチン接種後のBA.5に対する抗体量の変化を調査し、後日、結果を報告する予定です。
【4回目ワクチン接種者の抗体価の推移調査】
本調査の一方で、ワクチン接種後の個人にフォーカスを当ててみると、ワクチン接種後に高い抗体量で あったとしても、抗体が減少することが知られています。第108回東京都新型コロナウイルス感染症モニタリング会議の報告(会議資料をもとに下図を作成)では、4回目接種後の中和抗体価(RBD)は、接種3か月後までほぼ横ばいで、その後に減衰し、5-6月で約1/4の抗体量(抗体価)ととなることが明らかにされています。目安として、接種後約4ヶ月が経過した際には、警戒が必要になってくることが想像されました。
ただ、ワクチン接種によって作られる抗体の種類と抗体量(抗体価)は、人によって異なります。個人が病気になるリスクを知るためには、現在、感染の流行している変異株(BA.5)に対する抗体量を把握することが重要となります。その抗体保有量により、起こりうるリスクの程度を効果的に理解することができ、そのリスクを把握することで、ワクチン接種を含めた適切な感染予防策を講じることができるのです。
今年5月に政府方針で「2種相当」から「5種」に移行されることで(感染対策が個人の責任に移行していく中)、この抗体保有量によるリスクの可視化により、より手堅く感染予防が進むことが期待されます。
【調査実施の背景】
2022年に新型コロナウイルスにオミクロン系統が出現して以来、様々な変異株が出現し、現在、第8波が進行中です。そのため、変異株に対する免疫(抗体)を作るための新しいワクチンが研究、開発され、次々と登場してきています。そこで、当社ではBA.1、BA.5型のオミクロン対応(2価)ワクチンの有効性(抗体の有無)、効果(抗体の量)について、オミクロン変異株に対する抗体の保有状況を調べることにしました。当社では、新型コロナ感染者を少しでも減らすために、小規模ではありますが、引き続き有用な調査を行って参ります。
【まとめ】
現在、最も流行しているオミクロン株BA.5に対する抗体を十分に保有していることが分かれば、非常に安心感を持つことができます。そして、オミクロン株BA.5、BA.2、BA.1に対する抗体の量(抗体価)を詳しく調べて、ご自身の感染予防対策、ワクチン接種時期の検討材料などに役立てることができます。
ただ、単に抗体量(抗体価)の多い少ないということにとどまらず、ご自身の状況を正確に把握することが大切です。このご自身の状況の把握は、オミクロン株対応ワクチン接種に不安を感じている方にとって、接種の機会やタイミングを見極めるために役立つと考えられます。
▽過去の調査(参考)
ワクチン接種を検討されている以下の3名の方について、抗体量(抗体価)を調べました。
<対象者>
A さん(50 代) : 従来型ワクチン( 1価 ) 3 回目接種済、接種後 8ヶ月。感染自覚無し。
B さん(40 代) : 従来型ワクチン( 1価 ) 4 回目接種済、接種後 6ヶ月。感染自覚無し。
C さん(40 代) : ワクチン未接種。感染自覚無し。
オミクロン株に対応する抗体の保有状況がそれぞれ異なっていることが分かりました。上図より、従来型ワクチン(1価)の接種者であるAさんとBさんで、オミクロン株に対応する抗体を保有するBさんと、検出されないAさんが確認されました。ただ、Bさんも、現在流行しているBA.5に対応する抗体が検出されていませんでした。そして、ワクチン未接種のCさんからは、オミクロン株に対する抗体が検出され、感染していたことが分かりました。また、Aさんについて、オミクロン株対応ワクチン(2価)を接種した後に追加調査をしたところ、オミクロン株に対する抗体量(抗体価)が上昇していました。
【本調査の留意点】
今回の調査では、有料で検査にご協力いただいたこともあり、新型コロナウイルス感染症対策に高い関心をお持ちの方が調査に参加されたという「選択バイアス」の存在がございます。このバイアスが、本調査の結果に影響を与えた可能性はあります。
【今回使用した、変異株抗体検査について】
これまでの抗体検査では、感染やワクチン接種により抗体が作られたことが分かったとしても、どの変異株に対応できる抗体を保持しているかまでは分かりませんでした。
その為、株式会社プロテックス(本社:埼玉県和光市、代表取締役:西崎政男)では、オミクロン株 BA.5、BA.2、 BA.1、従来株の4種類に対する抗体を調べることができる、自宅で検査ができるイージードクⓇ『 変異株 抗体検査 』を提供しております。
▽本サービスのTV報道https://www.youtube.com/watch?v=FofFsCD3CFg&t=2s
【『変異株抗体検査』の求められる理由】
ワクチン接種や感染によって抗体がどの程度作られるかは個人差があります。また、接種後に一旦上がる抗体量(抗体価)は日にちが経過するにつれて低下することが知られています。イージードクⓇ『変異株抗体検査』をすることで、ワクチン接種の効果がどれくらい現れて、接種から数ヶ月後に抗体がどれくらいであるのかを知ることができます。
【検査を受けるメリット】
ご自身や近親者の抗体が十分であると分かれば普段の生活で安心感を持つことができるでしょう。また、抗体量(抗体価)が少ないと知ることができれば、旅行やスポーツ観戦などの際に一層の注意を払うことができます。将来的には、ワクチン接種時期の判断材料に発展させていきたいと考えております。
【サービスの概要】
商品名:イージードクⓇ「変異株 抗体検査」 (研究用)
検査項目:オミクロン株の抗体検査(RBD領域)、ワクチン接種の効果を調べる抗体検査。
過去の感染歴を調べる抗体検査(オプション検査)
採血方法:自己採血 ※ご自宅で採血できます
検査方法:マイクロアレイ自動測定システム、ELISA法
申込方法:スマホやPCで「イージードクⓇ」サイトよりお申込み
販売価格:9,900円(税込)
【サイトURL】
イージードクⓇURLは、https://easydoc.jp/
【販売元】
会社名:株式会社プロテックス
住所:埼玉県和光市南2-3-13 和光理研インキュベーションプラザ
事業内容:ウイルス及び細菌の高感度検出技術の研究開発、試薬等の製造販売他
【注釈】
※1 受容体結合領域に結合する抗体は中和抗体になり得ます。
※2 基準値(120AU/ml)とは、培養細胞を用いた実験上でのウイルス阻止効果が十分あると推定される抗体量(抗体価)を指します(この推定は実験による結果をもとにしたものです)。ただし、この基準値を下回ると効果がなくなるということではなく、十分な効果を示す確率が抗体量(抗体価)に応じて低下するとされています(従来株に対する抗体の場合、基準値の半分量で約8割の確率)。