連載初回の原稿を読んだ時、自分の中にひた隠しにしていた醜い感情を目の当たりにしているようで、あまりの衝撃にクラクラしました。まさに人間のドス黒い部分を描く「黒テラチ」の真骨頂! 本作は他人事ではないリアルな私達の物語です。
主人公は、「いじめ」「夫によるモラハラ」「毒母からの圧」「ママ友マウント」などで心に傷を追った三人の男女です。
幼少時の辛い記憶が残っているのに、いまだ生まれ育った地方都市で暮らす彼らの積み重なった心の傷はやがて……。本書はまさに「心の傷が産んだサスペンス」です。
寺地さん自身、「これほど精神的肉体的に消耗する連載は初めてで、悩みまくりながら書いた、わたしにとって大事な作品」と語るほどに全力を注いだ作品。想像を超えるほど進化し続ける寺地さんに大いに驚いてください。
「他人を殺す。自分を殺す。どちらにしても、その一歩を踏み出すのは意外とたやすい」と感じさせる本書に、窪美澄さんと前田敦子さんから感動の声が、寄せられています。
- 窪美澄さん(直木賞作家)
読み終えて、大きな赦しをこの物語からもらったような気がした。
- 前田敦子さん(女優)
心に隙間ができた時、人は人に依存しかねない。
でも、この小説は「誰でもそうだよ」と、
安心と救いをくれました。
<内容紹介>
同じ地方都市に生まれ育ち現在もそこに暮らしている三人。4歳の娘を育てるシングルマザー――朱音。朱音と同じ保育園に娘を預ける専業主婦――莉子。マンション管理会社勤務の独身――園田。いじめ、モラハラ夫、母親の支配。心の傷は、恨みとなり、やがて……。2023年本屋大賞ノミネート、最旬の注目度No.1作家最新長篇。
<著者紹介>
寺地はるな(てらち・はるな)
1977年佐賀県生まれ。大阪府在住。2014年『ビオレタ』で第4回ポプラ社小説新人賞を受賞しデビュー。2020年『夜が暗いとはかぎらない』で第33回山本周五郎賞候補。2021年『水を縫う』で第42回吉川英治文学新人賞候補。同年同作で第9回河合隼雄物語賞受賞。『川のほとりに立つ者は』で2023年本屋大賞9位入賞。他の作品に『カレーの時間』『白ゆき紅ばら』などがある。
<書籍データ>
【タイトル】わたしたちに翼はいらない
【著者名】寺地はるな
【発売日】2023年8月18日
【造本】四六判ハードカバー
【定価】1815円(税込)
【ISBN】978-4-10-353192-0
【URL】https://www.shinchosha.co.jp/book/353192/