背景
当ホテルの目の前を流れる奥入瀬渓流には、日本で約1800種類ある苔のうち約300種類以上が生息しています。2011年の東日本大震災の影響で、奥入瀬渓流は観光客が大きく減少しました(*1)。その際に、新たな観光資源を模索する中で注目されたのが、苔でした。当時は苔を観光資源にすることに、さまざまな方面から懐疑的な意見が挙がりましたが、誰より奥入瀬渓流を愛する地域の事業者がその魅力を発信し続けることで、少しずつ苔への注目も高まっていきました。2013年には「日本の貴重なコケの森」に選定され、苔はエリアを代表する大人気コンテンツとなりました。奥入瀬渓流が「日本の貴重なコケの森」に選定されて10年の節目となる機会に、これまでの10年を振り返り、地域とともに未来を語る場を設けたく、実施しました。
*1 青森県観光入込客統計(青森県観光国際戦略局)より
苔とともに地域が歩んだ10年を振り返る
まず各事業者がそれぞれの切り口で、苔を通して地域の観光を支えてきたこれまでの10年間を振り返り、その歩みを確かめました。
・NPO法人奥入瀬自然観光資源研究会(おいけん)
おいけんでは、2011年より2年間にわたり、日本の苔の専門家トップ10人を奥入瀬渓流に招き、調査と研修会を実施してきました。2012年「モス・プロジェクトin奥入瀬」として「コケガールミーティング」を開催してきました。2013年には「日本蘚苔類(せんたいるい)学会青森大会」開催、2014年に「奥入瀬コケハンドブック」を発刊するなど、奥入瀬渓流における苔の観光の礎を築いてきました。現在は、モニタリング調査、出版事業、ガイドツアー(株式会社ESARIO)、ガイド養成を行っています。
・一般社団法人 十和田奥入瀬観光機構
戦略的観光地域づくり推進事業(マーケティング事業、販路拡大事業、宣伝・情報発信事業、観光開発事業、受入体制整備事業、インバウンド対策事業)を行っています。受入体制整備事業のなかで、多くの来訪者に奥入瀬渓流の上質な自然の成り立ち、自然環境や歴史文化の大切さをご案内できる、ネイチャーガイドの育成を行なっています。2022年度は、合わせて23名のネイチャーガイドがデビューし、奥入瀬渓流の魅力を伝えています。
・奥入瀬モスボール工房
奥入瀬モスボール工房では、渓流に点在する苔むした岩をイメージして小さな奥入瀬を表現する「こけ玉作り体験」、苔のデザインをランプの灯りで表現する「奥入瀬ランプ制作体験」など、年齢や国籍を問わず楽しむことができ、自宅に帰ってからも、苔の思い出を味わえるコンテンツを提案してきました。
・星野リゾート 奥入瀬渓流ホテル
当ホテルでは、2013年に「苔ガールステイプラン」、2014年にアクティビティ「苔さんぽ」、2016年に自由研究プログラム「苔キッズ」など、ホテルらしい切り口で苔を楽しめるコンテンツを提供し、奥入瀬渓流と苔の認知向上を図っています。
苔をちりばめたユニークなコンテンツを体験
10年間ともに奥入瀬渓流の観光を支えてきた事業者に、2023年に登場したばかりのラグジュアリーな客室「苔スイートルーム」をお披露目しました。苔スイートルームは、至るところに苔のデザインを施した、苔に包まれる贅沢感とくつろぎを感じられる、こだわりの客室です。続いて、苔スイートルーム宿泊者限定の特別朝食「苔モーニング」の試食会を実施しました。参加した事業者の方々は、さまざまな目線で、苔を通した新たなコンテンツの可能性を探っていました。
10年後の奥入瀬渓流と苔の観光を語るトークセッション
これまでの10年の歩みを踏まえ、奥入瀬渓流と苔の観光について、参加者でトークセッションを行いました。トークセッションのテーマは「10年後の奥入瀬渓流の観光について」です。まず「奥入瀬渓流の自然の楽しみ方を知りたい方に、苔はその楽しさを学ぶ入口としてぴったりだと思う」という意見が挙がり、「ニッチな世界だけれど覗き込んでみると可愛いのが苔の魅力。お客様は、可愛いという思いから自然を学び、奥入瀬渓流のファンになる。ファンになることで、また来たいという、リピートにも繋がる」などと苔と観光のつながりを語りあいました。「苔を通して奥入瀬渓流の魅力を観光客に伝えるだけでなく、地元の子どもたちにもその魅力を感じてもらうことで、将来には地元の自然を愛して、観光に携わる人材が増えればいい」と、これからの未来に向けた意見が交わされました。
奥入瀬渓流の苔年表
2012年 地元のネイチャーガイドたちにより、モスプロジェクトスタート。東日本大震災後、十和田・奥入瀬エリアの観光促進のため、苔が新たな観光資源として注目された。
2013年 日本蘚苔類学会より日本の貴重なコケの森に認定。
2014年 「日本蘚苔類学会第 43 回大会」が奥入瀬渓流ホテルで開催される。全国各地の苔に関する研究者が参加し、苔の研究発表や観察会が行われた。
2018年 十和田市で「モスツーリズムシンポジウム 2018」開催。奥入瀬渓流のモスツーリズムの取り組みとして宿泊プラン「苔ガールステイ」が紹介された。
【関連コンテンツ】苔10周年記念! 朝から晩まで苔三昧の宿泊プラン「おいらせ苔旅」
当ホテルでは苔にまつわるコンテンツの誕生10周年を記念して、朝から晩まで苔三昧の宿泊プラン「おいらせ苔旅」を提供しています。苔をテーマにした「苔スイートルーム」で、贅沢な時間を過ごせます。奥入瀬渓流沿いで苔をじっくり観察するアクティビティ「苔さんぽ」や、本物の苔を観察している気分を楽しめる朝食「苔モーニング」を楽しむことができる、苔づくしの宿泊プランです。
星野リゾート 奥入瀬渓流ホテル
奥入瀬渓流沿いに建つ唯一のリゾートホテル。渓流が目の前に広がる露天風呂や岡本太郎作の巨大暖炉が印象的なロビーが癒しの空間を醸し出します。「渓流スローライフ」をコンセプトに心から満たされる滞在を演出します。
所在地 :〒034-0301 青森県十和田市大字奥瀬字栃久保231
電話 :050-3134-8094(星野リゾート予約センター)
客室数 :187室・チェックイン:15:00/チェックアウト:12:00
料金 :1泊24,000円~(2名1室利用時1名あたり、税込、夕朝食付)
アクセス:JR八戸駅・青森駅から車で約90分(無料送迎バスあり・要予約)