2023年11月30日(木)をもって、株式会社ニキシモ(本社:東京都千代田区、代表取締役・北山実優)は、MIRARTHホールディングス株式会社(旧・株式会社タカラレーベン・本社:東京都千代田区、代表取締役・島田和一)との共同事業として進めてきた栃木県・那須での「アートビオトープ那須」プロジェクト(以下「本事業」)を終了します。
2017年4月にスタートした本事業は、株式会社ニキシモと、株式会社タカラレーベン(現・MIRARTHホールディングス株式会社)と2社共同事業としてスタートし、2018年に完成したランドアート「水庭」(建築:石上純也氏)に、2020年10月にスイートヴィラ(建築:坂 茂氏)及びレストランμ(ミュー)が加わり、「アートビオトープ那須」がグランドオープンしました。しかし、折悪しく開業のタイミングに、1000日に及ぶ新型コロナウイルスの世界的な大流行が重なり、各方面に甚大な影響をもたらし、なかでも観光業の受けたダメージは極めて大きく、その影響は東日本大震災のインパクトを遥かに上回るものと感じられました。その影響が長く尾を引く中で、不本意ながらこの度本事業を終了する運びとなりました。
昨秋以降、当社ブランドでの継続運営について協議を重ねてきましたが、両社の目指す文化事業の方向性の相違は埋め難く、合意までには至りませんでした。残念ではございますが、事情をご察し頂き、ご理解賜りたくお願い申し上げる次第です。
本事業の終了に伴い、同地で運営してきた「アートビオトープ那須」(スイートヴィラ・レジデンス・スタジオ・水庭)の営業は、2023年11月26日(日)のチェックアウトを以て終了します。今後はMIRARTHホールディングス株式会社により、同地で別ブランドのホテルがホテル運営部により独自運営される予定とのことですが、詳細は把握しておりません。
長きにわたりお支え頂いた皆様に厚く御礼申し上げます。今後共この環境の保全にお力添えを頂きたくお願い申し上げます。
『1982年この那須山麓横沢にはじめて立った時、“牧草地、放棄地、原野”が混合した、荒れた地に一本の美しいせせらぎの音が優しく、心揺さぶられたことを昨日のように思い出します。この地をカルチャーリゾートとして40年、「二期倶楽部」「アートビオトープ」「水庭」「スタジオ」と、プロデュースから運営まで、環境を整えてまいりました。
二期倶楽部(現星野リゾート「リゾナーレ那須」)、アートビオトープ(MIRARTHホールディングス株式会社)は人の手に託すことになりますが、郷土史によればメインストリートから少し横に入った沢の美しい場所と記されている通り、今後もこの地の環境保全にお力添えいただき、さらに発展していくことを願ってやみません。
二期倶楽部創業者/総合プロデューサー 北山ひとみ』
アートビオトープ那須について
「アートビオトープ」とは、「アート」と「生命の場所」を意味する「ビオトープ」という言葉を組み合わせた造語で、動植物が一つの生態系を形作っていくように、アートをテーマに人々が集い、交感し合い、コロニーを形成していく苗床となることを願ってつけられたものです。アートビオトープ活動は、アーティストの滞在制作を支援する「アーティスト・イン・レジデンス」プログラムやオープンカレッジ「山のシューレ」、各国大使夫人による音楽会などの文化事業を継続的に開催してきました。
「アートビオトープ那須」は、同地区に創業した「二期倶楽部」(1986年-2017年)の創業20周年を記念した文化事業として、2007年に誕生しました。
2020年10月オープンしたスイートヴィラは、自然と共生を一貫したテーマに、二期倶楽部創業者である北山ひとみのプロデュースにより計画されました。設計を手がけたのは、日本を代表する建築家の一人、坂茂氏。建築界のノーベル賞といわれるプリッカー賞を受賞、さらに広範な社会貢献事業が評価されて、日本人として初めてマザー・テレサ社会正義賞を受賞しました。奥行3メートルの大きなテラスを持つ完全独立型の14棟(計15室)のコテージは、敷地の両脇を流れる美しい渓流を間近で楽しめるように、緩やかな傾斜を持つ土地の形状を生かして配置されています。
また長年に渡り「ギャラリー册(さつ)」(東京・九段下)を運営してきた実績や、オリジナルの書架をプロデュースしてきた経験をもとに、全ての客室内とライブラリーラウンジには、オリジナル棚が設置されています。
レストランμ(ミュー)では、「畑からテーブルまで」というテーマをもとに、東北地方の玄関口とも言われる栃木エリアから東北エリアまで広げ厳選した素材の可能性を追求しています。2020年10月開業後の2021年、2022年、2023年の3年連続で、権威あるレストランガイドブック「ゴ・エ・ミヨガイドジャパン」に掲載されました。
エントランスには、陶芸家の近藤高弘氏による陶のオブジェが設置されています。これは、イサム・ノグチが晩年に愛用したことで知られる、伊達冠石が風化することによって生まれた大蔵寂土を素材とした世界初の陶芸作品です。これらの陶板は東北への入り口である那須の地を象徴すると共に、人の技と素材の力によって生まれる世界観を示しています。
施設全体のグラフィックディレクションを手掛けたのはグラフィックデザイナー・原研哉氏。アートビオトープのロゴから敷地内サインはじめ、各パンフレットなど担当。ギフトとしても人気の高い「水庭」のポストカードは、写真家・上田義彦氏による撮り下ろし。
ブランドプロデューサー:北山ひとみ(二期倶楽部創業者)
スイートヴィラ:坂 茂
レストラン・インテリアデザイン:株式会社エイジ(代表:佐藤一郎)、株式会社プラスニューオフィス一級建築士事務所(代表:瀬戸健似)
水庭:石上純也
アートビオトープ那須 概要
開業日:2020年10月2日
所在地:栃木県那須郡那須町高久乙道上2294-3
客室数:スイートヴィラ15室、レジデンス15室
レストラン:μ(48席)
カフェ:Kantan(25席)
その他:水庭、スタジオ、ショップ、ホワイトリムジン
株式会社ニキシモについて
株式会社ニキシモは、日本型ブティックリゾートである栃木県・那須の「二期倶楽部」オーナーにより2015年に設立されました。2018年には株式会社二期リゾートが手掛けていた事業を継承し、「アートビオトープ那須」を中心にホテル開発からホスピタリティ教育・文化事業などを展開しています。また、2008年から開催してきたオープンカレッジ「山のシューレ」の開催と、若手芸術家を支援するアーティスト・イン・レジデンス(AIR)を通じ、文化・芸術活動を推進しています。
所在地:〒102-0074東京都千代田区九段南2-1-17 パークマンション千鳥ヶ淵1階
設立: 2015年 6月
事業内容:ホテル開発・企画、ホスピタリティ教育・文化事業
【参考】アートビオトープ誕生までの経緯
1986年、自然と共生をテーマに「二期倶楽部」がわずか6室の客室からスタート。建築家・故渡辺明氏による、日本の伝統的な素材である大谷石や赤松を大胆に使った端正な建物は、デザイン界を中心に大きな話題となりました。二期倶楽部の「二期」には、「一期一会より、一期二会へ」という第二の故郷として生涯にわたりご利用いただきたい思いが込められています。「ホテルの機能性」と「日本のおもてなし」を兼ね備えたブティック型リゾートという、これまでにない小型宿泊施設が誕生。
1997年、空間デザイナーである故杉本貴志氏のデザインによる別館を増設。14室の客室に加え、バーをしつらえたレストラン「ラ・ブリーズ」も完成。畑からテーブルまでをコンセプトに自家菜園で無農薬栽培された食材など、「食」というメインコンセプトをより明快にアピールし、森の中の露天風呂、日本初のホテル併設型アロマトリートメントプロデュースは、二期倶楽部独自の滞在スタイルとして高く評価されました。
2003年 同敷地内に「NIKI CLUB&SPA」オープン。テレンス・コンラン卿率いるコンラン&パートナーズのデザインにより、自然林を生かした緩やかな台地に、24室のコテージ、スパやアロマトリートメントルームを擁した長期滞在型スパリゾートが誕生。独立型ヴィラを持つ24の客室は、中庭を取り囲むように配置され、ゲスト同士がコミュニケーションを図れるように工夫されています。二期倶楽部の食の要素に“身・心”の健康というテーマが加わりました。
2006年、清水が沸き出る敷地内に、巨大な7つの巨石と鏡面ステンレスによる野外劇場「七石舞台 かがみ」が完成しました。松岡正剛氏のディレクションの下に、設計は内藤廣氏が手掛けたこの舞台は、屋根も柱もない、太古の石と現代のテクノロジーを使った鏡面ステンレスに空と木々とが逆さまに映り込むユニークな舞台です。2008年から2016年まで開催されているオープンカレッジ「山のシューレ」のメイン舞台としても使用されました。
隣接する敷地にあるアートビオトープ レジデンスは、同地区に創業した「二期倶楽部」(1986年―2017年)の創業20周年を記念した文化事業として、2006年にオープンしました。本格的な陶芸とガラスのスタジオを備えたこの施設では、国内外のアーティストの滞在制作を支援する「アーティスト・イン・レジデンス」プログラムを継続的に開催してきました。このほかにも小松誠・板橋廣美、三輪和彦、小池頌子、中村錦平、中村卓夫、新里明士、川端健太郎など、日本を代表する現代工芸家のワークショップや、オープンカレッジ「山のシューレ」を2008年から毎年開催してきました。建築家・塚本由晴氏(アトリエ・ワン)によって設計されたホワイトリムジンは、屋台という仮設の場所を新しい公共の場として、中庭で開催されている週末のマルシェのシンボルとして運営されています。
2018年には、このアートビオトープ レジデンスに隣接する敷地に「水庭」が誕生。
人の叡智と自然の叡智とが交わる新しい建築を表現するランドアートには、完成以来多くの人々に訪問いただいています。元々の森林から水田、そして牧草地となったこの土地の記憶が、318本の木々と160個の池を、モザイクのように点在、再構成させることで建築家による「庭」が表現されています。
この庭の設計は日本建築学会賞など多数の受賞歴を持つ建築家・石上純也氏。カルティエ現代美術財団の「石上純也 自由な建築」展(2018年・パリ、2019年・上海)においても紹介され、世界的に大きな注目を集めました。水庭は「COOL JAPAN AWARD 2019」(クールジャパン協議会)、「グッドデザイン2019」ベスト100を受賞したほか、水庭の成果により石上氏が芸術選奨文部科学大臣新人賞(2019年)、デンマークの新しい建築賞であるオベル賞(2019年)を受賞しました。オベル賞の選考に際しては、水庭は「建築の未来の道筋を再定義できる影響力のあるアイデア」と高く評価されました。