10月からは慶應義塾大学で「イタリア語文法」の入門講座がスタートすることもあり、今回は、豊かな愛情表現で知られるイタリア語について深掘りしました。
日本人は感情表現の苦手な人が多いのですが、イタリア語を学ぶことで、もっと豊かな言葉使いを考えるきっかけにしてください。
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イタリア人の男女の教訓<もっと喧嘩せよ>
<喧嘩がない愛は美しくない。 L’amore non è bello se nonè litigarello.>。イタリア語でもっとも有名なことわざのひとつです。イタリア人は声量があり、あまり言葉もオブラートに包まず、口と頭が直結。割と言いたいことをそのまま言ってしまいます。大切なことは気持ちを吐き出して、互いに歩み寄ること。そうしてのちに禍根を残さないこと。それが恋愛の達人であるイタリアの男女であり、恋愛だけでなく、仕事の職場の人間模様でもあります。
イタリアの文豪アンドレア・カミッレーリは、<真実を語る言葉は、まったく違う響きを持つ Le parole che ci dicono la verità hanno una vibrazione diversa>と言っています。その意味は<喧嘩>とは真実の言葉のやりとりで、だから<喧嘩>がない愛は美しくないということです。
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謝らないで謝る!?<恋愛の達人テクニック>
<沈黙は金である。Il silenzio è d’oro. >
古代からイタリアに伝わる有名な諺です。日本語の「言わぬが花」とはまた異なる意味があります。
実はイタリア人は、謝罪の代用品としてよく“沈黙”を繰り出します。“欧米人は謝らない”と思っている方はいませんか?実はそんなことはありません。イタリア人は“謝らないで謝る技”を熟知しているのです。
たとえば男女の喧嘩のなかで女性が求めることは、自分の話に真摯に耳を傾ける姿勢であり、ちょうどいい相槌とささやかな共感だけですよね。するべきことは、決して話の内容に対する意見や、叱責や評論ではありません。これは古今東西変わらないセオリーです。
ではイタリア人の男女が喧嘩をした場合、“謝らない”男性は、どのようにその場を収めているのでしょうか?
実は“沈黙の作用”をうまく使っているのです。日頃お喋りが止まらないイタリア人男性が、まずピタッと沈黙する。それだけで、一歩引いて謙虚になった印象を与えます。
そして相手の目を見ながら、黙って女性の話が途切れるまで耳を傾け、「僕もそう思う。Sono d’accordo.」と一言だけ添えてまた沈黙すればいいのです。そうすると、やがてすっと嵐は過ぎ去ります。安易な謝罪の言葉を使わず、一言だけで品よく白旗を上げる。「喧嘩がない愛は美しくない」と言いますが、翻って解釈してみれば、「美しく品性ある喧嘩を積極的にせよ、されば愛は続いていく」というなわけです。
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幸せになるイタリアの言葉とは<魔法の一言>
実は充足感のある暮らしをしているイタリア人女性の傍らには、いつも寛容に女性の自己実現を応援する男性の姿があります。女性政治家のミラ・バッターリアは、選挙活動に在宅ワークの夫が同行していたことで知られています。イタリアでは、世帯年収が多い家庭ほど、仕事、美容、子育て、体型維持など、年齢と共に、女性の自己実現に対する思いが大きくなる傾向があります。
“魔法の一言”はいつも飾りけない言葉です。聡いイタリア人男性は傍らの女性に対して、夢や思い描くビジョンの話にいつも耳を傾け、“金の沈黙”を続けます。そして「僕は味方だ。Sono con te.」と応援する気持ちを一言伝えるだけ。その一言だけで充分であり、追い求めた夢の結果はあくまでその女性の自己責任なのです。クレバーなイタリア人男性は先回りして諫めることはしません。
「強い意志は岩さえも貫通する」というイタリア語の諺がありますが、相手の意思を折ろうとしたり、高まる気持ちを宥めようとすると、男女の関係は崩れていくでしょう。
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楽しいイタリア語入門講座スタート<暮らしに役立つ感情表現を>
日本人にとっても人間関係の考察に役立つイタリア語の諺や表現はたくさんあります。イタリア語は時には古代ローマから続く教訓に満ちた、彩り豊かな言語です。そんな魅力に満ちた言語を日本に広めていくため、今年の秋からイタリア語の入門講座を開講いたします。
慶應義塾大学外国語教育研究センター公開講座の『イタリア語文法入門』(開催期間2023/10/03~2024/01/16)を担当。イタリア語はオペラ発祥のとても音楽的な音色を持ち、イタリア文化の豊かさや人生哲学の深さを映し出す美しい言語です。イタリア語の言葉の魅力を伝えることで、日本人にはない社会行動や面白い慣習などを紹介していきます。まるでイタリアを訪れている気分になれるような楽しい内容にしたいと思います。
https://fls-keio.sa-advance.com/lectures/view/1241
【編集後記】
イタリア人は陽気でおしゃべり好きで、思っていることがすぐに顔に出るひとたちです。だから<ワインと秘密は一緒に暮らせない>なんて諺も。だから男女の関係性も日本とは大きく異なります。そんなイタリアだからこそ、出過ぎた言葉に対する対処法も、日本の皆さんにも大いに役立つものばかりです。ぜひメンズバレンタインデーなどで恋愛のお悩みにも参考にしてみてくださいね。
■イタリア通信 編集長 ⻑⾕川悠⾥
株式会社エルゴン・ジャパン代表取締役
慶応義塾⼤学⽂学部 / 慶応義塾⼤学外国語教育センター講師
⼗代半ばで渡伊し、ファッションの都ミラノと最古の⼤学町ボローニャという、⼆つのまったく異なるイタリアの都市で育つ。現在は東京・港区で会社経営をしながら慶応義塾⼤学でイタリア言語の非常勤講師として教壇にたつ。
経営する会社は、イタリアで50年の歴史を持つグローバル・コスメティックブランド「eLGON」の日本国内での正規直営店を運営する「株式会社エルゴン・ジャパン」。
2018年3月の日本ローンチ以来、順調に売り上げを伸ばし、百貨店やサロンなどへも販路を拡大。日本とイタリアの交流をビジネス面からも促進している。イタリアの老舗ブランドと本格的にビジネス展開する日本では数少ない女性経営者。
エルゴン・ジャパン : https://elgon.co.jp
■経歴・実績:
ボローニャ国⽴⼤学卒業。ミラノ国⽴⼤学⼤学院修了。司⾺遼太郎奨励賞。著書に『ダンテの遺⾔』(朝⽇新聞出版)、『イタリア語会話フレーズブック―すぐに使える⽇常表現2900』(アスカカルチャー)ほか。
■「eLGON」
エルゴンはイタリア・ミラノ創業で50年の歴史を持ち、プロフェッショナル・サロンを中心に世界93か国に展開。すべての製造工程で、自社直営のもと、厳格な安全基準を守って生産。世界でも評価される徹底した品質管理体制を維持し、ISO22716やISO90001など厳しい安全・品質管理の国際認証機関の審査をクリア。サスティナブルな未来を目指し、SDGsを推進するグローバル・コスメティックブランド。