特別受益の持戻しの概要
被相続人から特定の相続人に対し生前贈与等が行われた場合には、
特別受益があるわけですが、特別受益分を遺産の中に入れて具体的相続分を計算することを
「特別受益の持戻し」と言います。
特別受益分を相続財産に加え、その金額に応じて具体的相続分を計算し、
計算後の特別受益者の相続分から特別受益分を差し引きます。
持戻しの対象となる「婚姻」のため受けた贈与
「婚姻」のため受けた贈与をその文言通りに解釈すると、
婚姻に関連して贈与された財産は全て特別受益に該当するものとも思えますが、
「一般的には、通常の結納金や結婚式の挙式費用は含まれず、
特別の持参金や支度金が、特別受益になる」と解されています。
ただし、結納金や挙式費用という名目で贈与されていれば、
全て特別受益に該当しない訳でもなく、
共同相続人間の公平を図るという特別受益制度の趣旨に鑑み、
他の相続人に贈与された財産の価格とのバランスなどから
特別の利益と言えるかを実質的に判断することになります。
特別受益の持戻し免除の意思表示
被相続人が、遺産相続にあたり、特別受益を遺産に持戻す必要がない
との意思を示すことを「持戻し免除の意思表示」といいます。
免除の意思表示は明示又は黙示でもよく、被相続人は免除の意思表示をした後でも
自由にこれを撤回することができます。
特別受益の持戻しの免除が認められるのは、被相続人が自分の財産を
誰に贈与するかは自由なので、その意思を尊重するものです。
持戻し免除の意思表示の方法については、法律上定めはありません。
そのため、口頭でも構いませんが、免除意思の有無が争いになった場合、
その意思が有ることを認めてもらうためには証拠が必要になるので、
遺言に明示しておくことが望ましいといえます。
遺言には、「遺言者は、令和○年○月○日、Aに対し金1000万円を贈与したが、
民法903条1項に規定する相続財産の算定に当たっては、
当該贈与額は、相続財産の価額に加えないものとする。」というように記載します。
特別受益に時効はある?